人生で初めてのデスクとチェアを、ずっと使いたくなるものに。学習家具mirumio誕生の裏側
オカムラを知る

人生で初めてのデスクとチェアを、ずっと使いたくなるものに。学習家具mirumio誕生の裏側

子どもたちが机に向かう姿勢や、勉強に取り組む集中力を養う大切な存在、学習家具。人生で初めての自分専用の家具は学習家具だった、という人も多いのではないでしょうか。


そんな学習家具が、オカムラから新たに誕生しました。その名は「mirumio(ミルミオ)」。人間工学に基づいて設計されたメッシュチェア、天板の高さやデスクトップオプションを成長に合わせて簡単に調節できるデスクは、子どもの体にしっかりフィットし、好ましい姿勢を身につけられる作りが特徴です。


今回は、mirumioの開発に込めた想いを、企画担当の岩田友香さんにインタビュー。オフィス家具の開発を通して、はたらく人々を支えてきたオカムラだからこそ実現できたこだわり、製品の魅力について聞きました。

オカムラだからこそできる、「人生で初めて使う」チェアの開発を

―なぜ学習家具mirumioの開発に取り組むことになったのか、プロジェクト始動の背景についてお聞かせいただけますか。
岩田

これまで、さまざまなワークチェアを開発してきたメーカーとして「人生で初めて使う椅子がオカムラの椅子であってほしい」と考えたのが、mirumio開発のきっかけでした。「人生で初めて使う椅子」といえば、学習家具が思い浮かびますよね。


学習家具は机と椅子のセットが基本ですから、これらをトータルで開発することになったんです。


また、オカムラがもつ人間工学の知見を活かして、「子どもたちが座るときの“好ましい姿勢”を身につけられるような製品をつくりたい」という想いもありました。

mirumioのネーミングは、ラテン語で「mio」=「私の」、「mirum」=「驚く」の組み合わせから

―岩田さんは本プロジェクトの企画のご担当ですが、これまでにも開発に携わってこられたのでしょうか。
岩田
いえ、実は私にとってmirumioは、初めて主担当として開発した製品なんです。なので、個人的にもかなり思い入れのあるプロジェクトになりました。

mirumio企画を担当した、岩田友香さん

―そうだったのですね! 開発は、どのような体制で進められたのでしょうか。

岩田

企画者の私のほかに、意匠を考えるデザイナーや、構造を考える設計と一緒に行いました。また、販売部門にも意見を聞くなどして製販一体となって開発を行いました。


私が製品ラインナップ全ての企画を担ったのですが、当初は、デスクのみを担当するはずだったんですよ。

―おひとりで担うことになったのはなぜですか?

岩田

上司に「学習家具の情報収集をしてみて」と言われ取り組んだところ、「それだけの熱意があるなら、両方を担当できるよ」と任せてもらえることになったんです。

―いきなり大役を任されることになったんですね。プレッシャーはありませんでしたか……?

岩田

もちろん、ありました(笑)。椅子はオカムラの花形製品でもあります。使用者の全体重を支える唯一の家具とも言える椅子は、開発が難しいものだと理解していました。


でも、熱意を買ってもらえたのはとてもうれしかったですね。

成長し続ける身体を支える学習家具を

―そんな岩田さんが製品を企画するにあたり、まずは何からはじめたのでしょうか?

岩田

椅子の企画担当経験者や社内にいる人間工学の専門家に話を聞き、椅子づくりに必要な機能などの知識を身につけました。まず、オカムラが考える好ましい姿勢とは、「体圧を適切に分散し、身体への負担を軽減できている状態」を指します。


そのためには、足を前後に動かしても足裏が床につくこと、背もたれに背中がつくこと、膝裏と座面の間に指2本くらいの隙間が空いていることの3点を実現できることが重要です。

岩田

子ども向けの椅子に関しても、この要素は同じです。しかし、子どもは身長がどんどん伸びるので、成長過程に合わせて、こまめに家具を調節できるようにするかが課題となりました。そこで、簡単に高さや座面の奥行きを調節できるようにしたいという要件を企画書に盛り込みました。

企画を組み立てていくなか、どんな方に使ってほしいとイメージされていましたか。

岩田

最近ではリビング学習や中学校受験など、お子様の学習の仕方をしっかりと考えられている保護者の方が増えてきています。特に都内では熱心な保護者の方が多く、大人の仕事環境と同じように子どもたちの学習環境を快適にしたいというニーズがあると感じました。


そのため、mirumioを使用するメインの年齢層は、机に向かう時間が増える小学4、5年生以上を想定しました。


一方、小学校入学時に学習家具を購入したいと考える方も少なくないので、低学年のお子さんにもフットステップやアジャストクッションがついたジュニアタイプも準備することにしました。

スタンダードタイプの他に、フットステップやアジャストクッションがついたジュニアタイプも販売

岩田

また、小学生から中学生、高校生と、大きく身体が成長する期間はもちろんのこと、大学生、大人となるまで、長く使える製品にしたいという気持ちもありました。だから、高さなどの調節の幅を大きくとるだけでなく、デザインやデスクトップオプションの使い勝手についても、こだわりたいと考えていました。

試作を重ね、より子どもの身体にフィットする製品へブラッシュアップ

コンセプトやターゲットが固まり、次は実際に形にしていく段階に入ったと思います。

岩田

はい。企画書をデザイナーに出し、試作を重ねていったのですが、途中で要件を出し直したこともありましたね。

たとえば、どういった変更があったのでしょうか。

岩田

前傾姿勢のほうが、短い時間に集中しやすくなるというデータがあるため、当初は座面を前に傾けたデザインを考えていました。


しかし、mirumioが大切にしたいのは、「今後の子どもたちに活きる、好ましい姿勢を身につけてもらうこと」。だから、筆記はもちろんPC作業もしやすい、オカムラのシーティングでも基本的な、少し後傾した座面に変更しました。

―本来の目的を考えて決められたのですね。mirumioチェアは背もたれのメッシュ素材もこだわりポイントだったそうですね。

岩田

そうなんです。代謝がよく汗をかきやすい子どもにとっては、メッシュの通気性も快適さにつながります。また、一般的な学習椅子に多いクッションチェアよりも、メッシュチェアのほうが見た目がシンプルで、「大人になっても使える」デザインを叶えられるとも考えました。


メッシュ素材の活用は、オカムラの十八番でもあります。今回は子どもにとって初めての椅子なのでフィット感を重視したいと考え、背中を包み込むように背フレームがカーブしている形状を考えました。

背もたれのカーブとメッシュがこだわり

岩田

でも、半円状のフレームの内側にメッシュを張ることはオカムラとして初の試みで、社内でもそもそも張れるのか、張れたとしても理想の座り心地になるのかわかりませんでした。


木枠を使った模型を活用し、背フレームのカーブやメッシュ生地の種類を変えながら試行錯誤しました。ラインナップの中で、やはり椅子の開発が1番大変だったなと思います。

試作段階のmirumioチェア

―デスクの開発についてはいかがでしょうか。

岩田

天板の高さは工具を使わずに調節できるようにしました。天板の高さを調節するのは、身長の伸びに合わせて年1回程度の頻度だと思われますが、保護者の方がおっくうだと感じることなく変えられるよう設計しました。

天板の高さの調整は、脚部にあるボタンを押しながら、高くするときは天板を引き上げ、低くするときは天板を下げるだけ。分解したり、新しい部材を追加したりなど工具を使った面倒な組み換えをせずに済む

岩田

デスク上のオプションを考えるのも課題でした。あらためてデスクに必要な機能を考えたとき、ノートパソコンの使用時には固定の棚は使いづらいと思ったんです。そこで、使い方に合わせて、最適な状態にできるようにしました。


あとは、時間割表はデスク前の壁に貼ることが多いと思うのですが、天板の高さを変えるたびに時間割表もいちいち貼り直すのは手間だろうなと考えて、デスクにパネルをつけたんです。ファブリック製にすることで、インテリアになじむ風合いになりました。ブックエンドやタブレットスタンドは位置も変えられるため、小学校から中高生、大学、大人へとライフスタイルが変わっても、自由度高くお使いいただけます。

近年増えているタブレット学習に対応し、見やすくタッチしやすいタブレットスタンド

―ワゴンはシンプルなオープンラックですね。

岩田

従来の引き出し式のワゴンだと、「プリントを溜め込んで、引き出しの奥から見覚えのないお便りが発掘されたりする……」という話を聞いて、この形になりました。

――なるほど。手持ちのファイルボックスを入れたり、カバン置き場にしたりと、子どもや保護者が思い思いに使えるのが嬉しいですね。

オープンラックのワゴン。プリンター置き場としても使えるサイズ感

改良は最後の最後まで。子どもたちに試してもらったことで、より質の高い製品に

今回の開発では、社員のお子さんたちに実際に試していただいたそうですね。

岩田

そうなんです。小学3年生から中学生までの10人ほどに試してもらいました。子どもたちの体格は、想定していた以上に幅があって。特に小さな子どもたちの体にもっと合うよう、改良を重ねました。


その後は、お子さんのいるインフルエンサーの方にもご協力いただいて、感想を反映しての最終的な微調整も行いました。

実際にお試しいただいたことで、印象に残っている気づきはありましたか?

岩田

mirumioはデスクもチェアも簡単な組み立て式なのですが、開発メンバーも家具を試した社員も、家具の組み立てに慣れているため、組み立てについて疑問を抱くことがなかったんです。


でも、一般の方はそうとは限りません。「左右が分かりづらい」「ビスが回り切っているのかわからない」「座面カバーをしわなく付けるコツを知りたい」といったリアルなお声をいただけたことで、取扱説明書をよりわかりやすいものにできました。

―こうして完成したmirumioは、まずクラウドファンディングで世に送り出されました。支援者の方からの反響はいかがでしたか?

岩田

オカムラにとってはクラウドファンディング自体が珍しく、果たして買ってもらえるのかという不安もあったのですが、ありがたいことに多くの方から支援をいただきました。


クラファン期間中には、実際にmirumioを体験できるイベントを開催し、実物を見られない不安を払拭できるようにしました。来場者のなかにはイベントに足を運んで試したうえで支援を決めてくださった方もいたんです。体験できる場を設けて良かったと思いましたし、開発経緯を知ったうえで足を運び、良いと思って支援を決めてくださったことが本当にうれしかったですね。

オフィス家具メーカーだからこそできる個人向け家具づくりに注力を

―今回のプロジェクトを終えた心境をお伺いしたいです。

岩田

mirumioの開発には2年を要しました。あらためて振り返ると、椅子の開発や人間工学の難しさをひしひしと感じた期間でしたね。


つい先日(2025年7月14日)、mirumioは日本子育て支援大賞を受賞しました。ご評価いただけてうれしく思う一方、今回の経験をブラッシュアップしながら次の開発に挑みたい気持ちもあります。

―最後に、岩田さんご自身の展望についてお聞かせください。

岩田

オカムラは「人が活きる場を創る」を掲げています。自宅はまさに人が活きる場所であるため、これからも個人向け製品のニーズを捉えて、お客様に寄り添える製品開発を進めていけたらと思います。


オカムラはもともと車を作っていたメーカーなので、オフィス家具においても、かっこいいデザインで機能性が高いがフォーカスされてきたと思うんです。しかし、最近では「オフィスのリビング化」が進み、空間になじむプロダクトデザインのニーズが高まってきていると思います。今後もニーズの変化に合わせた製品を生み出していけるといいなと思っています。

mirumio
[ミルミオ]
PROFILE
川村健一

岩田友香

オフィス環境事業本部 事業戦略統括部 ブランドマーケティング部 プロダクトマーケティンググループ

大学卒業後、2020年に株式会社オカムラに新卒で入社。2022年11月に開発創造本部に異動し、自身初の開発担当となるmirumio開発プロジェクトの企画担当者を務める。現在はブランドマーケティング部で、オフィス家具、家庭用製品の開発を担当。

CREDIT

取材・執筆:卯岡若菜 撮影:藤原葉子 編集:モリヤワオン(ノオト)

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

¥0,000

PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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